セパの差だけではない,日本シリーズ 4 連敗の原因

昨年の日本シリーズ。始まる前からソフトバンクの有利が予想されていました。自分は「圧倒的な差で優勝した巨人が負けるとセ・リーグの威信が保たれないんじゃないか…」と考え,普段はアンチの巨人を応援していました。結果は(以下自粛)。

 

この記事では,あのような結果になったのは(もちろんセパの差も関係はしていますが)シーズン終盤での調子が対照的だったのが大きい,ということを記していきたいと思います。

 

この記事で使う "Elo rating" というシステムについては,以下のことを知っておいてください。

  • Elo rating を使うと,試合で勝つ確率を大まかに予想できる。レーティングの差が大きければ大きいほど,勝つと予想される確率は大きくなる。
  • 試合があるとレーティングは更新される。負けたチームから勝ったチームにレーティングを渡すような形で更新は行われる。

もっと詳しく知りたい方は↓↓↓

hoshio.hatenablog.com

 

さて,昨年のセ・リーグの各チームの日にちごとの Elo rating の推移をグラフに表すと,次のようになります。*1

f:id:hoshiotan:20210302115811p:plain

巨人が 10 月上旬までレーティングのトップを走り続けていたことがわかります。しかし,シーズンの最後にかけて調子を大きく崩し,最終戦の頃では阪神・中日・広島を下回り,DeNA と競って 4〜5 番目のレーティングになっています。*2

一方で,パ・リーグのレーティングの推移は以下のようになっています。今回は 2 リーグ間で差がないと仮定して,レーティングの初期値はセ・リーグのチームと同じにしました。

f:id:hoshiotan:20210302115053p:plain

9 月〜 10 月上旬まではソフトバンクとロッテが競り合っていましたが,突如としてソフトバンクのレーティングがすごい勢いで上がっていっているのがわかります。

それでは,巨人とソフトバンクのレーティングの推移だけを取り出してみましょう。

f:id:hoshiotan:20210302120035p:plain


10 月上旬まではあまりレーティングは変わりませんが,中旬以降,恐ろしいまでに両チームの調子が対照的になっていることがわかります。結局,最終戦終了時点では,レーティングの差が 251 もついてしまいました。この差は,巨人はソフトバンクと試合をすると 27.6% の確率でしか勝てないと予測できる,ということを意味します。27.6% の確率で勝つチームが日本シリーズで勝てる(= 相手より先に 4 勝できる)確率を計算すると,

9.7%

になります。

これはセ・パの差がないと仮定して話を進めて得られた数値なので,昨年の日本シリーズでは,巨人とソフトバンクのシーズン最終盤での調子の差が結果に大きな影響を及ぼしていたのではないかといえるのではないのでしょうか。(パ・リーグが強い分だけレーティングの初期値を上げると,この差もさらに大きくなり,巨人が日本シリーズで勝つ確率がさらに小さくなったのではないかと考えられます。すなわち,実際には巨人が日本シリーズを制する確率は 9.7% 未満だったということです。)

なお,過去 5 年でセ・リーグ交流戦での勝率が .445 であり,これを Elo rating に直すと,セ・リーグのレーティングの平均はパ・リーグのレーティングの平均より 57 だけ低いということになります。これは両チームのレーティング差 251 に比べるとかなり小さい値になっていることからも,この結論は確認できるのではないかと思います。

*1:最大変化値を 30 としました

*2:レーティングはその時点での実力を表すものなので,今までの総合成績を表す順位とは性質が大きく異なります。